アンナコト。コンナコト。
by kaady2
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ある日の朝。。。1
「火事です。マンションの方早く出て!!!」
拡声器を使用しているにも拘らず、物凄い大きく叫んでいる男性の声で目が覚めた。
カーテンを開けて窓から見える情報だけでは状況は何もつかめなかった。
窓を開けてベランダに出て真下を観ると、パトカーが1台停車していた。
拡声器で叫んでいた男性は警察官だということがわかった。
自分の居住するマンションの路地を挟んだ隣の2階建ての民家が激しく紅く燃えていることを確認した。
すでに火は2階建ての民家を包み込み、火も煙もこちらのマンションに向かっていた。
「これは夢ではないんだよね…。」
尋常ではない光景に、現実を受け止められないでいた。
まだ消防車が到着していないのに、火のまわりの速さに怯んでしまった。
一度部屋に入り、スマホで時間を確認する。
時計は5時45分。
何時に出火したのだろうか。
とにかく逃げる手段を考えなければいけないと現実に戻った。
自分の玄関も、マンションの玄関も、燃えている民家側にある。
ただ、内階段になっているため、民家と玄関の間にはマンションの壁があるため、玄関に直接火が回っているとは、この時点では考えられないと思った。
しかし、玄関側からの脱出はどう考えても無理だと思っていたのだが、現状を把握したくなってしまい、玄関向かった。
大きく息を吸って止め、タオルハンカチで口と鼻を押さえてから開錠する。
息を止めて恐る恐るドアを開けてみると、玄関ホールは煙に包まれており、1.5m先の窓ガラスの存在も確認はできなかった。
直ちにドアを閉めるが施錠は留まった。
一旦、部屋に戻る。
消防隊も到着していないのなら、ベランダに出てもまだ救助されることはありえないため、カーテンを閉めて電気をつけ、逃げるために着替えを始めた。
「あ、まだ電気がつくんだ。」
着替えながら、できることをやって待とうと無意識に思った。
着替え終わったところで、消防隊の到着はまだなかった。
小さなバッグに財布、スマホ、ハンドタオルを入れながら、カメラの存在を気にした。
カメラやレンズはリビングにある。
リビングとキッチンの部屋は日当たりがよく、廊下からつながる入口(西)以外のすべての方角に窓がある。
民家と向かい合う北側は壁ならまだしも、上下すりガラスになっている。
リビングに近づいてみる。
思った以上に、北側の窓から炎が迫っており、部屋の中がオレンジ色に染まり恐怖を感じた。
更には、室温が上昇していたため部屋に入ることは不可能だった。
窓が割れることも想定し、少しでも煙や熱風から逃れるために、無意味かもしれないとわかりつつ、リビングのドアを閉めた。
寝室に戻る途中、玄関の靴を手にし、寝室からベランダへ出ようとしたとき、ブンッと音とともに部屋の電気が消えた。
恐らく、電線が熱で焼けたのだ。
小さいバッグを持ち、靴を履いてベランダに出る。
この間、結構時間が経過していたと思ったが、まだ消防隊は到着していない。
拡声器をもつ警察官が「出れないのか?」と私に向かって叫んだ。
民家側に玄関が位置しているのだから出れると思うのか?と、状況を把握できていない警察官に一瞬苛立ちも感じたが、両手で大きく×を示した。
「今、消防が到着するから待ってて!」
十分待っているつもりだった。
しかし、時間を確認してから一連の行動をし、再度ベランダに立つまで。たった5分程度しか経過していなかった。
西に位置するベランダに立っていると、北側の民家の火によって、体の右側になんとなく熱を感じた。
はじめにベランダに出たときには感じなかったものだった。
この先、救助されるまでに何分間待つのだろうかと不安がよぎった。
「もしかして、だめなのかな。間に合わずに私は死ぬのだろうか。死なないいしても煙にまかれるのだろうか。」
恐らく1~2分、絶望感に陥っていたようだ。
ふと気が付くと、続々と消防車両が道路を占拠していた。
一度、弱気になった気持ちは簡単に戻らなかったが、絶望感からは抜け出せた気がした。
いつしか、消防隊員で道路がいっぱいになっていく。
ひとりの消防隊員がマンションを見上げて私に向かって言った。
「今、助けるから、慌てて飛び降りないで!!!絶対に助かるから。」
世の中に絶対はないと思うことは多々あるが、この絶対だけは心から信じた。
あともう少し…と思うとたったの10秒ですら、待てなくなるほど長い。
もし、自分の背中に火や煙が迫っていたら、慌てて飛び降りたくなる人もいるに違いない。
消防隊員の「慌てて飛び降りないで」の声掛けの意味を感じた。
そして、消防隊員がひとり乗っている梯子車が、私に限りなく近づいてくる。
「手を貸します。高さがありますが、こちらに来れますか。」
手袋をした大きい手を差し伸べてくれた。
エアコンの室外機に片足をかけると、消防隊員は、いとも簡単に、私を持ち上げてくれた。
そして私は梯子車に乗車し、ゆっくり、ゆっくり、自宅のマンションから離れていった。
ゆっくり、ゆっくり、地面が近づき、路上で待っていた消防隊からも手を差し伸べてもらい地に足をつけることができた。